Just for Highly Sensitive Therapists (and Coaches)

HSPのセラピスト（そしてコーチ）のみなさんへ

　HSPのセラピストであるみなさんは、もちろん、優れた仕事をされていることでしょう。でもHSPに伴うすべての状況でそうであるように、私たちは、自分や他の人たちが“金の卵を産むガチョウを殺す（※）”ことのないように、自身についても注意深くあるべきです。非HSPのセラピスト以上に、私たちは自分を大切にしなければならないのです。

※訳注：※イソップ物語のひとつ―ある男が金の卵を産むガチョウを手に入れたが、卵がもっと欲しくなってガチョウの腹を割ったところ、中には何もなく、ガチョウは死んでしまい、卵も手に入らなくなってしまった、という寓話に基づくことわざ。“目先の利益に目がくらみ将来の大きな利益をふいにする”を意味している。

　以下に、私自身の経験から得たアイデアをいくつかご紹介したいと思います。もちろん、みなさのん経験はそれぞれ異なるので、あなたのニーズに合わせて取り入れてみてください。ただし、すべての人に必須のセルフケアもあります。

• 最初の本（『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』）の“はじめに”で紹介した“５つの必須事項（ともはや呼んでもいいでしょう）”を実践する。この５つはもちろん、みなさん、HSPのクライエントたちにお話ししていますよね。：
  
  A、あなたの特性を本物だと確信する。もし疑問があれば、研究を読み直してみてください。
  B、「敏感」という観点から子供時代をリフレーミング（捉え直し）する。
  C、過去の傷を癒す。HSPは影響の受けやすさが異なります（良い環境からはより良い影響を、悪い環境からはより悪い影響を受けます―子供の頃もそして今も）。
  D、残りの80％の人たちと同じように生きようとは思わないように（セラピストの多くもこの80％の側にいることに注意を）。
  E、せめて一度くらいはHSPのグループに参加してみてください。どれくらい私たちが（非HSPと）違っているかがわかります。またチャンスがあったら、HSPの友人を持つことにトライしてみてください。
• セラピーの時間を減らす。私は、セラピストは誰でも、週に20時間以上セラピーをするのは良くないのではと思っています。特にHSPのセラピストだったら確実に。それ以上の時間だと、HSPはベストを尽くすのが難しくなります。ですから、週に4日働き、週末は3日以上連休を取るようにすることをおすすめします。もちろん、他に何か良い方法があるのならそれでもかまいません。もしもっと収入が必要なら、あまり仕事のきつくないパートタイムをするのもいいかもしれません。内向的な人なら、本を書く、編集の仕事に携わる、動物に関わる仕事をする、自然の中の仕事をする、クラフトを売る、料理の仕事で稼ぐ（ただし大きなプレッシャーのかかるケータリングはお勧めしません）などかあるかもしれませんね。外向的な人だったら、非臨床の（病気の人ではない）グループに携わる仕事、パートタイムの販売の仕事、あるいはあなたが良いと信じる商品を売る仕事（ただしプレッシャーのかからない環境で）などがいいかもしれません。
• 患者をスクリーニングする。患者をスクリーニング（選抜）し、最も難しいケースを受けないようにすることがとても肝心です。スクリーニングは電話でした方が良いでしょう。そうすれば、たった一回のセッションでも生まれるアタッチメントを形成しなくてすみます。その際は「あなたを受け入れられないかもしれない、面接で判断させてもらえないだろうか」と話してください。前もって理由を説明しておけば、個人的な理由で拒絶したように思われないでしょう。もしかしたら、あなたは診察する時間がないのではとためらうかもしれません。だとしたらそれは真実です。実際、あなたはとても難しい患者のために割ける時間の余裕はないからです。また、治療の見込みのある患者を、あなたが”好き”になることが大切だとも思います。私には、最初に魅力を感じた患者が、後になって非常に困難な患者だとわかったことがあります、だから”魅力がある”ことと”好き”になることは違うのです。もうひとつ、患者の現在の問題を当然みなさん知りたいと思われるでしょう。でも（スクリーニングで）重要なのは、おおまかな成育歴の方です（もしその人がおおまかな成育歴さえ話さないようでしたら、それ自体が危険信号かもしれません）。困難な患者を知るサインはみなさんご存知だと思います。子供の頃の虐待やインセスト、幼少期の非常に深刻なアタッチメント、親がホロコーストのようなとても恐ろしい経験を持っている、養育者が家族を捨てた、あるいはうつ病で苦しんでいた、薬物問題があった、不治の病だった、などなど。そのような人たちを、あなたはいつでももっとチャレンジ精神に富んだセラピストに紹介することができます（そういうセラピストは大勢います―調べてみてください）。最後に、その人が、治療に必要だとあなたが見込む期間、あなたの正規料金を支払える資金（現金もしくは保険）を持っているかどうかも必ず確認してください。これについては率直に。
• ダウンタイム。すべてのHSPは（もちろんあなたのことです）、たっぷりとしたダウンタイムの時間が必要です。これは、それをしなかった時にその結果として訪れる不幸な結果―重大なミス、病気、うつ、大切な関係を壊してしまう等―を避けるためです。理想としては、患者を診たすぐ後、オフィスの近く（オフィスの中ではなく）で取るのがいいでしょう。もし帰ってから一緒に過ごす家族がいる場合は、その前にダウンタイム（横になる、瞑想する、一人で散歩する等）を取る必要があることを理解してもらってください。また特に、あなたに家族がいる、もしくはあなたが内向的な場合は、あなたの社会生活を制限する必要があります。あなたのことを支えてくれる人たちであっても、日々の刺激を増やしてしまう原因になるからです。
• 仕事を持ち帰らない。どういうわけか、私はいつも、患者から私自身を心理的に切り離すことができていました。おそらく最初の頃、四六時中頭から離れない難しい患者を受け持った経験から、注意深くスクリーニングすることができるようになったのかもしれません。そう、ですからこれもスクリーニングなのです。他にも、文字通り家に持ち帰らない方が良いものがあります。記録は、クライエントとの面接の合間々々に取りましょう。そのための時間を次の面接との間に十分に取ってください。家では記録を取らないように。保険の処理も同様です。たくさんの事務処理は避けたいものです。用紙に記入しなければならないような保険の雑務は避けるか、できたら保険に加入しない方が良いでしょう。ただそうなるとお金の問題が出てきますよね。
• クライエントに適切な料金を請求する―すなわち十分な額を請求する！　これは、クライエントがその人生でとても重要な何かに支払えるだけの額を請求する、という意味です。あるクライエントにとっては、その額は大学の学費に相当するかもしれません。ここは彼らに同情している場面ではありません。なぜなら、あなたの境界を築くと同時に、あなたは彼らにとってロールモデルになる必要があるからです。これはあなたが様々な人々と良い仕事をするための、唯一の倫理的な方法だと言えるでしょう。また、他の専門家が提供しない、そしてほとんどの専門家がまだ目を向けていない、あなた独自の専門性を発展させることにも役立つかもしれません。例えば、子どもたちの気質（行動に影響を与えるすべての気質バリエーション）について、親たちに教えることができるセラピストは、おそらくまだほんのわずかしかいません。実際、成人の大人たちは、敏感さ以外にも様々な気質を持っているにもかかわらず、それらはあまり知られていません（例えばEvans and Rothbartの成人気質質問表などがあります：https://www.b-di.com/atqweb.html；　これはマイヤーズ・ブリッグス指標とはまったく異なります）。よかったらご参考までに。
• 良きスーパーバイザーを見つける。あなたの料金に値するスーパーバイザーを見つけてください。良いスーパーバイザーを持つことがとても重要だと私は信じています。もし電話で連絡を取ることができ、24時間以内に返事をもらえるなら、週末に会いに行く必要はないでしょう。また、グループスーパービジョンよりは個別のスーパービジョンの方が良いと思います。後者はかなり疲れますし、あなたのニーズを満たしてくれない可能性があります。外向的な方は自分はだいじょうぶだと思われる方もいるかもしれませんが、それでも疲れてしまうことがよくあるのです。他の患者の話、特に心理療法家がわざわざ取り上げるようなケースは強烈な場合が多い。ですからあなたに必要なのは、あなたの知る最高のセラピストを選ぶことです。これはとっても重要です。なぜなら、あなたの抱える困難をそのセラピストに一定期間背負わせ、次のセッションでどうするべきかを二人で徹底的に考えることになるからです。あなたが選ぶスーパーバイザーは、必ずしもHSPでなくてもかまいません（十分に理解してくれるのなら、どちらでも同じです）、でも優しく敏感であるべきです。気まずい思いを抱えたまま、スーパーバイザーのオフィスを後にするのは良くありません。オフィスを出る時は、あなた方は二人とも何かを得た、あるいは、正しいことをしてきている、といった気持ちを感じているべきです。親切で賢明な人であっても、ぶっきらぼうな言い方をする時があります。「なぜそんなことをしたんだ」とか「どういうつもりなんだ」などと。これは単に非HSPのボリュームで話すからなのですが、こういった言い方はあなたたちのスーパービジョンにはあるべきではありません。
• あなた自身のセラピストを見つける。私はまた、全てとは言わないまでも、ほとんどのセラピストは自分のためのセラピーを受けた方が良いと考えています。繰り返しますが、たとえ料金が高くついたとしても、その金額に見合う分だけあなたの助けになってくれるはずです。他にも理由はたくさんありますが、ここでは省くことにします。もしあなたが長くセラピーを受けてきたのなら、これからもずっと続ける必要はないかもしれません。でも、何か問題が持ち上がった時に、いつでも戻ってこれるようにしておくのが理想だと思います。
• 頻繁に休暇を取る。もし分離や愛着の問題をあなたが持っていたら、似たような問題を持つ患者に心惹かれる可能性があります。そして、その患者から、休日以外に年に2週間以上休みをとって離れることを、ひどく残酷なことのように感じるかもしれません。でも、おそらくは、もっと多くあなたは休むべきなのです。私の相談役は私にこう話したことがあります―”そうすることで、あなたは良い境界線を持つロールモデルになることができる。それに他人より多くのその時間を必要とする人（＝HSP）でなければ、あなたのような良いセラピストになることはできないでしょう！”と。最後に、患者たちはいつ何が起ころうとも、あなたなしにやっていけることに慣れていかなければなりません。ですから、最初のスクリーニングの時点で、“年に数カ月休みます”と伝え、彼らがそれを受け入れやすいにようにしておくとよいでしょう。もし彼らがそれに対処できない、あるいは彼らのバックグランドを考えると対処が難しいとあなたが考えるのなら、その時は、彼らを他の専門家に紹介することがとても重要になります。別の言い方をすると、その事実そのものが、その患者をスクリーニングするためのもっともな理由になる、ということです。

　繰り返しますが、上記のいくつかを実行することは、収入減を意味します。少なくとも短期的には。でもいま私たち話しているのは、あなたの人生についてのことなのです。